家族皆が過ごす一体型LDK
匠の技が活きた安心の空間

　小高い山の上に建つ家からは遠くの山々が眺望でき、春には周辺各所で桜の木々が咲き誇る。土地感の良さと美しい景観に惚れ込んだご主人が「この土地で、この人と家を建てたい」という思いから始まったM邸の家づくり。
　優しい杉の木の温もりを足下で感じながら廊下を進むと、そこにはキッチンと土間のあるLDKが現れる。父、母、子供たちがどの場所にいながら家族の様子がうかがえる、ワンルーム型LDKの利点が活かされた空間だ。ここで印象深いのが、丸太をそのまま大胆に使用した大きな梁と、木組み工法で作られた柱部分。木組み工法とは、釘を使わず木と木を組み合わせたり木栓を打ち込むことで、確実な耐久性を保つ伝統的な大工技法のひとつ。「坂口工務店」の持ち味ともいえる“木組み”そのものをデザインとして捉え、美しい木目が織りなす自然の木地の魅力を発揮した「木組みの見える家」がここに完成した。

風土に見合った基本設計で
快適さを追求した空間づくり

　２階の屋根部分に伸びる煙突に至るまで、こだわりの“ワインレッド”に特注ペイントが施されたご主人お気に入りの薪ストーブ。１階で温められた温かい空気が吹き抜けより2階へと流れ、さらに2階階段上に設置されているシーリングファンの対流によってその空気は１階へと流れる。冬場はこうして家全体が暖かく快適な温度が保たれていく。夏場は窓から入る風に対しての道筋を考慮し、自然対流を利用すべく出口となる窓の設置場所を工夫した設計に。夏は涼しく冬暖かく、快適さを追求した空間づくりも特徴的だ。
　M邸では、土台以外のすべての構造において富山県産の木材を使用。富山の気候と風土を熟知したうえで、使用箇所ごとに“木の持つ特性”を活かしながら施工されている。木にこだわった職人の技が生み出した家。時が経つほどに味わい深く変化を遂げるその様は、これから過ごす施主家族と携わった職人たちの楽しみとなっているようだ。