先祖からの枠の内を継承する意匠×機能を叶えた納得の設計

　“枠の内”とは、金具を使わず木の梁を組み上げて作る、富山の風土と匠が生んだ伝統工法。約70年前に祖父が建てた旧M邸には、立派な枠の内の部屋が存在していた。「大事に後世へと継承していきたい」との強い想いと共に、M邸の建て替え計画はスタートした。
　昔の建造物を現代の建物に移し替えることで“デザインが良ければ機能が落ち、機能が良ければデザインが劣るのでは”との、一抹の不安があったことは否めない。しかしその定説を覆すべく、設計・デザイン・施工面すべてにおいて『平光工務店』には力強い提案力があった。
　1階の枠の内を中心と捉えた設計では、周りにリビング→ダイニング→家事室→風呂・洗面→トイレ→廊下→玄関と、バリアフリーの回廊で繋がりと一体感を持たせた。風や人の流れを綿密に計算された、使い勝手の良さが最大の魅力だ。さらに旧宅のらんまや神棚は、木の色調に合わせてインテリアに取り込んだ。毎日ご先祖様の感じられるモダンな空間は、施主夫妻も大満足の居心地だそう。

一生の住まいに妥協は皆無細やかな工夫で快適さを充実

　『平光工務店』では、提案したプランにお客様から別の要望が与えられれば、それを踏まえて１からプランを練り直すというこだわりがある。「ベースの設計の上に要望を継ぎ足していくと、ただ貼り付けただけのちぐはぐな家になってしまいます」とは同社設計士。「一生の住まいは決して妥協せず、要望を最大限に叶えられるよう尽力を注いでいます」。
　確かにM邸には、細やかで工夫ある設計が随所に見受けられる。例えば多くの親戚が集まるこの家では、スペースを取らざるを得ない布団を常駐しなくてはならないという条件があった。そこで１階の廊下の壁に収納部屋を設置。「目立たせず、かつ寝床となる枠の内へは最短の動線で」を可能なものとした。さらに奥様の定位置であるキッチンの立ち位置の目線にも考慮。目の前の窓からはご主人が手入れする立派な庭が望めるよう大きな窓を取り付けた。「休みの日は庭の手入れでつぶれちゃうんだよ」とご主人。奥様のために庭の手入れに精を出すご主人の幸せな姿が目に浮かんだ。